(追記。6.15)信濃毎日新聞社の記事をめぐるその後の動きは->こちら
同じく、記事の訂正等の申入れの正誤表(追加分を含む)の最新は->こちら
3月29日信濃毎日新聞の記事について
2020年4月7日
理事長 松武秀樹
3月29日信濃毎日新聞朝刊に、「理事が人格否定発言か」「共同代表の一人 退任の事態」という見出しの記事が掲載されました。NPOまつもと子ども留学基金(以下、単にNPOといいます)が検討したところ、この記事はその内容において、また取材の経緯においても以下の通り大きな問題があり、到底、真実を伝える報道機関の記事として適切なものでないと判断し、近日中に、信濃毎日新聞社に、以下の表の通り、記事の訂正を求めて抗議の申入れをする予定です。
この件につきましては、今後、必要に応じて、経緯をご説明、報告いたしますので、今後ともご指導、ご協力をよろしくお願いいたします。
記事と訂正申入の対比一覧表(下線は重要な部分)
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記事の記載 |
訂正を申し入れる記載 |
① |
「共同代表の一人 退任の事態」 |
「共同代表の一人 当初の予定通り退任」 |
「植木宏理事長は(3月)17日の理事会で謝罪を提起。反対多数で否決され、今月末での退任を申し出た」 |
「植木宏理事長は(3月)17日の理事会で謝罪を提起。反対多数で否決され、当初の予定通り今月末で退任する」 |
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② |
「(3月17日に)法人の調査では事実関係の確認に至らず、‥‥法人としての謝罪を理事会で提案したが否決された」 |
「法人としての謝罪を理事会で提案したが、3月17日にまでに、提案者が提案理由の事実を明らかにしなかったので、否決された」 |
③ |
「子どもは18年11月、法人側に相談。関係者が聞き取ったが確認できず、理事の配置転換などはしなかった」 |
「子どもは18年11月、スタッフのことで法人側に相談。関係者が聞き取った結果、事実関係が確認でき、問題の決着がついた。その際、 関係者の配置転換などはしなかった」 |
④ |
「複数の関係者によると、寮で子どもの世話に当たっていた理事が、思い詰めて「死にたい」と話した子どもに「死ぬ前に玄関とトイレの掃除をして」と置き手紙を書いたとされる‥‥ 子どもは18年11月、法人側に相談。関係者が聞き取ったが確認できず、理事の配置転換などはしなかった。子どもは寮を出た。」 |
「子どもは18年11月、スタッフのことで法人側に相談。関係者が聞き取った結果、事実関係が確認でき、問題の決着がついた。その際、 関係者の配置転換などはしなかった。19年7月、スタッフの都合のため寮運営体制の見直しにより寮を出て市内下宿の体制が決定された。寮を出る前日に至り、置き手紙を書いたという話題が取り沙汰された。」 |
1、記事の内容について訂正の理由
上記の①から④の記事について、訂正を求める理由は以下の通りです。
①.「共同代表の一人 退任の事態」という見出しとこれに関する本文
記事は、見出しに「共同代表の一人 退任の事態」、本文に「植木宏理事長は(3月)17日の理事会で謝罪を提起。反対多数で否決され、今月末での退任を申し出た」と書かれています。
そのため、これを読む読者は次のように理解すると思います――植木理事長は、理事会で自身が提起した謝罪の議案が否決されたのを受けて、今月末での退任を申し出た。
しかし、これは事実とちがいます。もともと植木前理事長は昨年からくり返し、一身上の都合で今年3月でNPOからすべて離れると表明しており、NPO内では全員知っている事実だからです。そして、植木前理事長は当初の予定通り、3月31日、任期を終えて退任しました。
ですから、ここは正しくは、見出しは「共同代表の一人 当初の予定通り退任」、本文は「植木宏理事長は(3月)17日の理事会で謝罪を提起。反対多数で否決され、当初の予定通り今月末で退任する」と書くべきです。
②.「法人の調査では事実関係の確認に至らず」というくだり
記事の1段目に「(3月17日に)法人の調査では事実関係の確認に至らず、‥‥法人としての謝罪を理事会で提案したが否決された」と書かれています。
これを読む読者は次のように理解すると思います――3月17日の理事会で、法人の調査により事実関係の確認に至らなかったので謝罪の提案は否決された。
しかし、これも事実とちがいます。植木前理事長は本年1月から理事会に謝罪を提案していましたが、肝心の提案理由(いつ、どこで、誰が誰に対し、どんな理由で、どんな内容の謝罪を求めているのかの事実)を明らかにしなかったため審議が延び延びとなり、3月17日の理事会まで何度リクエストしても、提案理由を明らかにしなかったので、審議するまでもないとして否決されたものです。提案者が提案理由の事実を明らかにしなかったので否決されたのであって、「法人の調査で事実関係の確認に至らなかった」訳ではありません。
ですから、ここは正しくは「法人としての謝罪を理事会で提案したが、3月17日にまでに、提案者が提案理由の事実を明らかにしなかったので、否決された」と書くべきです。
③.「関係者が聞き取ったが確認できず」というくだり
記事の3段目に「子どもは18年11月、法人側に相談。関係者が聞き取ったが確認できず、理事の配置転換などはしなかった」と書かれています。
これを読む読者は次のように理解すると思います――子どもは18年11月、法人に苦情相談した。これを受け、法人は聞き取り調査を行なったが、事実関係は確認できなかった。そこで、法人は、「理事の配置転換など」何も処分しなかった。
しかし、これは事実と全くちがいます。事実は以下の通りです。
(1)、18年11月、寮生から法人側にスタッフのことで相談があった。
(2)、これを受け、19年3月4日、関係者(NPOの監事と植木理事長の2名)が寮生から聞き取り調査を実施した結果、別の問題であることが確認できた。
(3)、聞き取り結果を報告した3月5日の理事会で問題の決着がつき、関係者の配置転換などしなかった。
すなわち、昨年3月4日の寮生のヒアリングにより、寮生が訴えていたスタッフの問題はひとまず解決しました。ところが、この記事はこの要となる事実を「聞き取ったが(事実関係は)確認できず」と反対の事実を書き、それがその次の文と相まって、さらに誤解を引き起こしました(これについては、次の④で述べます)。
ですから、ここは正しくは「子どもは18年11月、法人側に相談。関係者が聞き取った結果、事実関係が確認でき、問題の決着がついた。その際、関係者の配置転換などはしなかった」と書くべきです。
④.「複数の関係者によると‥‥子どもは寮を出た」までのくだり
記事の2段目の「複数の関係者によると」から3段目の「子どもは寮を出た」までこう書かれています。
「複数の関係者によると、寮で子どもの世話に当たっていた理事が、思い詰めて「死にたい」と話した子どもに「死ぬ前に玄関とトイレの掃除をして」と置き手紙を書いたとされる。‥‥
子どもは18年11月、法人側に相談。関係者が聞き取ったが確認できず、理事の配置転換などはしなかった。子どもは寮を出た。」
記事の冒頭の「理事の一人から人格を否定されるような発言をされ精神的苦痛を受けた-と子どもや保護者が訴え」を踏まえて、このくだりを読む読者は次のように理解すると思います。
(1)、理事が「死ぬ前に‥‥」の置き手紙を書いたので、この件で精神的苦痛を受けた子どもが18年11月に、法人側に苦情相談した。これを受け、法人は聞き取り調査を行なったが、事実関係は確認できなかった。そこで、法人は、「理事の配置転換など」何も処分しなかった。
(2)、この苦情申出が取り上げられなかったので、「子どもは寮を出た」。
しかし、この経過は事実と全くちがいます。実際の事実経過は次の通りです。
(1)、18年11月、寮生が法人側にスタッフのことで相談。しかしこの時、置き手紙の話は一言も口にしていなかった。
(2)、翌3月4日、関係者が寮生から聞き取り調査を実施した結果、別の問題であることが確認でき、決着がついた。しかしこの聞き取り調査の時、寮生から置き手紙の話は一言も口に出なかった。
(3)、7月にスタッフの都合で、寮運営体制の見直しを迫られ、寮生と親御さんからの要望もあり、寮を出て市内下宿の体制が決定された。
(4)、その決定を実行して寮を出る最終日(9月12日)、寮生から置き手紙に関する話題が出された。
つまり、「子どもは寮を出た」理由はスタッフの都合のため寮運営体制の見直しの結果であり、置き手紙は「子どもは寮を出た」前日に初めて取り沙汰されたものです。
ですから、ここは正しくは「子どもは18年11月、スタッフのことで法人側に相談。関係者が聞き取った結果、事実関係が確認でき、問題の決着がついた。その際、関係者の配置転換などはしなかった。19年7月、スタッフの都合のため寮運営体制の見直しにより寮を出て市内下宿の体制が決定された。寮を出る前日に至り、置き手紙を書いたという話題が取り沙汰された。」と書くべきです。
2、取材の経緯
今回の記事について、信濃毎日の記者から取材申込を受けた時、NPOとして、子どもの個人情報に関わる事柄を本人の同意や事実の確証もなしに記事にすべきではないという基本方針に立ち、3月28日(土)の午後、東京から松武理事長、松本市から2人の理事が記者と面談しました。予め記者から頂いた質問について具体的に説明して、記者が既に関係者から得た情報とは大きく食い違うこと、つまり1に述べましたように、真実に照らしても記事にすべきではないことを明らかにしました。最後に松武理事長から、「万が一記事にするようでしたら、予め原稿を見せて下さい」と申し入れた所、「これは報道記事だから見せられない」と拒否されました。しかし、昨年暮れ、NPOの寮生を取材して3月11日前後に記事にした時には予め原稿を寮生に見せて確認を取ったのに、今度はどうしたわけかダメだ、と。とはいえ、当日のNPOの説明によって双方の言い分が真っ向から食い違い、その事実関係の解明のためには取材継続は必至、当分の間は記事掲載は不可能と松武理事長らは判断して引き下がったところ、数時間後には記者から「明朝の朝刊に記事にする」旨の一報が入りました。青天の霹靂とはこのことかと言わんばかりの出来事に、松武理事長一同、「はめられた」(つまり初めから真摯に取材する気持ちはさらさらなく、「双方から取材した」という形だけ残すために取材を受けてしまった)と思ったのは決して誇張ではありませんでした。
以 上
※上記の投稿に対するご質問、ご意見などがありましたら、問い合わせフォーム(->こちら)から、またはメールアドレス matsumoto.relief*gmail.com(*を@に置き換えて下さい)までご連絡をお願いします。